A
悪意の遺棄とは、正当な理由なく民法752条の同居義務・協力義務・扶助義務を履行しないことを言います。
ここで言う「悪意の遺棄」とは、単に遺棄の事実ないし結果の発生を認識しているというよりも強い意味を持ち、社会的・倫理的非難に値する要素を含む意味を言います。
妻が夫の暴力から逃れるために家出した場合、それは正当な理由があっての家出なので悪意の遺棄には当たりません。
不貞を繰り返す夫に反省を求めるために、妻が一時家を出た例でも、正当な理由として悪意の遺棄に当たらないとする判例もあります。(長野地裁判昭和38年7月5日)
ほかに悪意の遺棄に当てはまらないケースとして、
仕事の都合による別居
病気治療のための別居
夫婦関係を考え直すための冷却期間を置くための別居
専業主婦であるが病気のために家事をしていない場合
健康上の都合で働けず生活費を家に入れない場合
などがあります。
悪意の遺棄には、相手を置き去りにして家を出てしまう行為だけではなく、相手を追い出す行為や、相手が家を出ざるを得ないように仕向けて復帰を拒む行為も含まれます。
あなたが勝手に出て行くことにすこしでも不安や抵抗を感じるのであれば、別居・離婚の理由を書面に書いて置いて出て行くのが望ましいですが、DVの場合、告げること自体が新たな暴力を招く可能性もあります。
先に書いた通り、このような場合は告げずに出て行かざるをえませんので、このケースであなたが悪意の遺棄をしたとして、今後の離婚の話し合いなどで不利になることはありません。
|