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この合意については、『子供から親に対する請求権』という親子の関係と『子供を養育監護している親から子供を養育監護していない親に対する請求権』という親同士の関係に分けて考える必要があります。
『子供から親に対する請求権』からいうと未成年の子供には、親に扶養される当然の権利があり、親権を持っていない親にも子供を扶養する義務があります。
この請求権の放棄という約束は、子供の権利から言うと無効という事になります。
ですが、『子供を養育監護している側から子供を養育監護してない親に対する請求権』という観点で見ると、自分自身の請求権を自ら放棄してしまっているわけですから、あとになって、これまでにかかった過去の養育費の分担を相手側に請求するのは難しいといえます。
ただ、子供の請求権は、失われるものではないので、将来にかかる養育費に関しては子供から請求するという形では認められる可能性はあります。(親が法定代理人となって請求)
ただ、無条件で認められるわけではなく、「合意は父と母の間で成立したもので、子に対しては拘束力を持たない、としつつ、合意は扶養料算定の際に斟酌されるべき一つの事由となる。」とした高裁の判例があり、また、「その合意の内容が著しく子供に不利益で、子の福祉を害する結果にいたるときは、子の扶養請求権はその合意に拘束されることなく、行使できる。そのほか、合意後の事情変更により合意の内容を維持することが実情に添わず、公平に反するときは、扶養料として増額の請求は認められる。」とする家審判例もあります。
いずれにしても、請求しないという合意をしているからといって、一切養育費の請求が認められないわけではなく、客観的に子供が養育費を必要としている状態であれば認められる可能性はあるので、安易にあきらめないで家庭裁判所に養育費請求の申し立てをするとよいでしょう。
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